ネイ
......ネコ耳じゃないようだけど?
うん。エルフみたいな、とんがり耳だね。
何か理由があって、ネイちゃんの名前が挙がってるのかな?
うん。それは即ち、ネイが僕の獣人系ネコ科属性の原点だから。
......まぁ、彼女は他にも色々と僕の心に残していってくれたけどね。
ふぅん......月夜ちゃんにとって、大切な存在なんだね?
そう。過去から現在まで続く僕の最初の源流は、ネイだと言っても良いかな。
......そっか。それじゃ、今回のお話はちょっと深い目になりそうだね。
最初の出会いは、本屋で『ファンタシースターⅡ』の攻略本を立ち読みしたこと。
......一目惚れ?
まぁ、そうね。純粋に「可愛い」って思った。
それで『ファンタシースターⅡ』の世界観も好みだったので......
メガドライブ本体と一緒に『ファンタシースターⅡ』を買った......と。
うん。『ファンタシースターⅡ』のビジュアルは凄かったね。
戦闘アニメーションとか、予想以上に良く動くよね。
そうだね。セガサターンで『ファンタシースターコレクション』を買って改めてやってみた時にも、
やっぱりこれは凄い......って思った。
初めて触れた時の感覚が蘇って来た......感じ?
そんな感じ。
メガドライブも過去の物となって、ゲームも進化を続けているけど、
『ファンタシースターⅡ』の初見のインパクトを超えるものには、まだ出会えてない気がする。
......初見のインパクトは、ネイちゃんの存在も含めてだよね?
もちろん、そうだよ。だから『ファンタシースターⅡ』は忘れられないんだ。
言いたいことは沢山あるんだけど......どこから話そうかな。
多少はゲームの背景の説明が要るよね。
そう......だね。
まず『ファンタシースターⅡ』の世界は、
マザーブレインというコンピュータに統合管理されていて、何も不都合は無いのね。
うん。
ところが、バイオモンスターと呼ばれる悪性生物が発生して、危機的状況に。
ゲームの始まりは、発生から数年後......だったっけ?
そう。で、政府エージェントのユーシス......主人公ね、
その彼がバイオモンスター発生の原因調査を命令されて、出発するところから始まる。
ネイちゃんはユーシスさんの妹なんだよね。で、ちょっと強引に着いて行っちゃう。
......本当の兄妹じゃないけどね。
ネイは、人間とバイオモンスターの細胞を掛け合わせて生まれた存在......で、亜人とでも言ったら良いのかな。
だから、とんがり耳なんだね。
他にも動物的な勘とか、敏捷性も持ち合わせているね。軽装でクローを使って戦う。
......で、ここが肝心なんだけど、ネイの存在は人間にとっては異分子なのね。
......そう......だろうね。悲しいけど。
「ネイ」って名前も、「○○にして○○にあらず」という否定の意味。
つまり、「人間にして人間にあらず」と......
綺麗な音の響きなのにね......
そうだね......そして、放浪の末に殺されかかっていたところをユーシスに助けられた。
兄妹としての関係は、それから始まったんだよね。
......ここら辺のお話は、悲しみの中にも温かい部分があって......良いね。
うん。でも、気になる点がいくつかあるんだ。
ユーシスさんと出会った時は子どもだったけど、七ヶ月で急激に成長した......ってこと?
そう。それと、もう一つ。
......何かな?
ネイの存在自体。
つまり、ネイみたいな存在がいることが、バイオモンスター発生に人為的な要因があるんじゃないか
......って思わせる。
なるほどね。......伏線ってやつかな?
僕の深読みし過ぎ......って言われたら、それまでなんだけどね。
くす。それは月夜ちゃんの悪い癖だね。
いや......はは。まぁ、こうして物語は始まる。
それは......悲劇の幕開け......なのかな?
それを、これから語ることになるね。
結論から入っちゃうけど、バイオモンスター発生の原因には人間が絡んでるのね。
......うん。やっぱりね......って感じもしちゃうけど......
人間と動物を掛け合わせる実験中、半ば事故のような形で生み出されたのは、
ネイ......ネイ・ファーストという存在。
ネイ・ファーストは失敗作として処分されそうになったところで逃亡し、
人間に対して復讐するためにバイオモンスターを作り出した。
......それじゃ......ユーシスさんと出会ったネイちゃんは?
ネイ・ファーストのやっていることが嫌で、分裂して生まれたのが......そのネイ。
だから正確には、「ネイ・セカンド」という呼び方になるんだろうね。
セカンド......
ネイはファーストの善の心が分裂した存在......ということになっている。
だけど......
......だけど?
善の感情に留まらない......例えば、
人間に対する復讐なのだけれど、行っていることは自分を生み出した人間達と同じ行為......であるとか、
行き着く先がどうであれ、自分は自然界において異質で孤独な存在であること......とか、
そういう複雑な感情からも、ネイは生まれたんじゃないか?......と、そういう気がする。
......ファーストさんとしても、そういう感情が邪魔だったのかな?
うん。そうだと思う。
それで、ファーストさんとネイちゃんは姉妹になる......んだよね。多分。
親子......とも思えるけど、公式設定は姉妹だね。
バイオモンスターの発生を止める......ということは、ファーストさんを止める......ということになるよね?
......そうなるね。
ネイちゃんはお姉さんと戦うことになっちゃう......んだよね。
残念だけど......そう。
ファーストのいる場所まで辿り着いた時に、待っているのは戦い。
......まず、ファーストさんとネイちゃんの一騎打ちになるんだよね。
とても悲しい光景......
そうだね。......それで、ゲーム的な話になっちゃうんだけど、
ネイのレベルが十分高ければ、この一騎打ちでファーストに勝利することができる。
ネイちゃんが負けちゃったら?
ユーシス以下、ネイを除いた三人パーティでファーストと戦うことになる。
......勝たなきゃ......いけないんだよね?
うん。
それでね、ネイが一騎打ちで勝利しようが、ユーシスたちが戦って勝とうが、ネイは......死んでしまうんだよ。
......ファーストさんが死んだから......なの?
......そうらしい。
ファーストとネイは分裂して別の個体になったのだけど、ファーストが本体のような役目を担っていた......
ということなんだろう......ね。
......ネイちゃんは、それをわかっていたのかな?
わかっていた......。姉妹なんだしね。
それに、もしネイが生き長らえたとしてもね......思い出してみてよ、
ネイは......七ヶ月で子どもから十代後半の状態にまで成長したんだよ。
......あ。
どう考えても、あと数年で寿命が来てしまうはず......
突然変異的に生まれたわけだから、おそらく成長速度の調整などはされてないだろうし......
......
......こんなのって......悲しすぎる。いくらなんでも......
......月夜ちゃん......涙......
ん......
......落ち着いた?
......ゴメン......ちょっと、自分の感情に深く下りすぎた。
......そう。そういうこともあるよ。たまには......ね。
話を戻すね......
シナリオ上、ネイが死んでしまうのは受け入れられるとしても、
墓を建ててあげるイベントが無かったのがちょっと......悲しいかな。
テキストのみだけど、「大地に帰してあげる」みたいなことは出てなかった?
そうなんだけど......
シリーズ完結編の『ファンターシースター ~千年紀の終わりに~』では
主人公ルディの師匠のライラさんが死んだときに、墓を建ててあげられたからさ......
でも、ユーシスさんたちはネイちゃんの死を悲しむ間もなく、
すぐに次の戦いに駆り立てられちゃったから......ね。
まぁ、そうだね。ネイの死は、まだシナリオ全体の三分の一くらいのところで、
ユーシスたちはこれから人類の存亡を懸けた戦いに巻き込まれて行くんだよね。
それは、「ネイちゃんの眠る大地を守る」戦いでもあるんだ......ね。
......まだ続くの?
言いたいこと沢山ある......って言ったでしょ。
そっか。それに、深い目のお話になりそう......って予感もあったっけ。
という訳で、続くよ。
うん。
最後の戦いに赴く前に、最強の武具を集めることになるんだけど、
その武具にはみんな「ネイ~」という名前が付けられているんだ。
......ネイ・シリーズ・ウエポン......ね。
「武具にして、武具にあらず」という訳だね。
これまで悲しみに覆われていた「ネイ」という名前が......希望を生み出す力の源になるなんてね。
うん。
ユーシスの仲間になるキャラクターたちは、みんな何らかのネイ・シリーズを身に付けることができるから、
みんなが「ネイ」と共に最後まで戦うことができる......と言えなくもないね。
......でも、やっぱり、ユーシスさんの武器「ネイソード」が......感慨深いね。
そうだね。それに「ネイ」という音の響きが、一番似合う気がする。
物語の最後に、武具としてユーシスたちの元に戻って来た......と、僕が勝手にそう思っている「ネイ」だけど、
ネイ自身についてもこれで終わったわけじゃないんだ。
......それは......これからの、未来のお話だね。
うん。その話は次の機会に譲るけどね。
ただ、これだけは言える。
ネイの存在は悲劇的だったけど、無駄なことではなかった。
ネイの記録と遺伝子は未来(後のシリーズ)へと受け継がれて行くのだから。
それから......私たちの記憶としても......ね。
もちろん、そう。そして、それが、一番重要なのかもね......
......うん、そうだね。
『ファンタシースターⅡ ~還らざる時の終わりに~』 | © SEGA ENTERPRISES, LTD. |
『ファンタシースター ~千年紀の終わりに~』 | © SEGA ENTERPRISES, LTD. |